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酔いどれデザイン日誌 - Drunken Design Diary -

都内でデザインファームを営む酔っ払いが、UI/UX設計やデザイン思考論を書き殴ります。

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すべてのデザインの基本「ユーザーヒアリング」を極めるには?

UX サービスデザイン 分析方法 考え方 ユーザー調査

せっかくブログをリニューアルしたのに全然更新できてませんでした・・・怠惰ですね。さて、最近よくユーザーヒアリングのテクニックとかあるの?コツとかあったら教えて!と言われることが多くなったので、私がユーザーヒアリングを行う際に意識している事を備忘録的に書き出してみたいと思います。スタートアップ企業や、大企業のCSやCX部門などユーザーと直接接する機会のある方はよろしければ見ていってくださいな。

目次

ヒアリングの3大落とし穴

勘所を知らぬまま長々と読んで頂くのもあれなので、先にアンチパターンをまとめます。気に留めながら自身のヒアリングを思い返して頂くと、かなりの確率で無意識にハマってしまっている方も多いのではないでしょうか。

  • 「やっぱりそうなんですね」と言ってしまうこと
  • 「それは○○ですか?」と聞いてしまうこと
  • このユーザーにはニーズが無かったと諦めてしまうこと

なにが悪いの?と言われそうなラインナップですが、これらはすべて確証バイアスをはじめとした様々な認知バイアスがかかっている時に無意識的に発言されるアンチパターンになっています。意識しながら話すとすぐにボロが出てることに気付けるので、ユーザーに会う前に社内でロールプレイングをしていくことを強くおすすめします。この中でも特に確証バイアスは厄介で、意図的に排除しながらヒアリングをするためには結構な回数の実践練習をしないと難しいと思います。

確証バイアスとは、平たく言うと仮説を裏付ける理由ばかりを優先して取り入れてしまい、反証する情報を無意識下で無視してしまう心理的な偏りのことです。あとで詳しく書きますが、バイアスがかかった状態でヒアリングを行ってしまうと、公平性を著しく損なう結果になってしまいます。

一応3大落とし穴の何が悪いか具体的に書くと、「やっぱりそうんですね」発言は、予め自分の中にあった仮説にフィットしたことに安堵している証拠(確証バイアスにハマっている)。「それは○○ですか?」は相手より先に思い込みで勝手に決めつけた具体例を言ってしまうことで回答の幅を狭める行為(相手にフレーミングを与えてアンカー効果を誘発している)。このユーザーにニーズが無かったと諦めることは、会話の一端をかいつまんで仮説にフィットしていないと判断している証拠(これまた確証バイアスにハマっている)です。

これを踏まえた上で『ヒアリングしてるときに何を考えてるの?』という冒頭のよくある質問についての回答ですが、何も考えてません。より正確には、意図的に何も考えないようにしています。何も知らない子供になったつもりで、すべての発言に対して「なんで?どうして?」という好奇心を持つことを心がけています。子供にはバイアスはありませんから、それに習って同じように一切の事前知識や雑念を取り払って当たり前だと感じる発言でも必ず理由を聞くようにすることが大切です。

ユーザーヒアリングの目的は仮説検証ではない

ユーザーヒアリングの目的は、仮説の検証ではありません。仮説を検証するために必要な情報を集めることが目的です。ここを勘違いして、ヒアリングの最中に仮説との付き合わせをしはじめる人が非常に多く居るように感じます。よくある勘違いの例として質問項目をまとめた『ヒアリングシート』をあらかじめ用意し、その仮説に基づいてYesかNoかを問うというヒアリング手法が横行していますが、これはアンケート調査のように対面が現実的に不可能なボリュームに対して有効な調査方法であり、対面調査で用いてしまうと自分も相手も確証バイアスにどっぷりハマって結果が偏ってしまうため、私はおすすめしていません。

もうひとつ、ヒアリング中に具体的な提案をしてしまうのもよくありません。これは、アンチパターンの「それは○○ですか?」と同じくヒアリングしている相手をアンカー効果の罠にハメてしまうことになるためです。例えば背が低い人の「ボタンが押しにくくて困っています」という発言に対して『じゃあ、この位置まで下げたらどうですか?』と提案してしまうと「いいと思う!」となってそこで会話が終了してしまいます。もっと課題を深掘りできるチャンスだったのに、これでは非常に勿体ないです。背が低い=位置が高いから押しづらいのだと決めつけず、こういう場合は『なんで押しづらいんですかね?』と一見アホっぽい質問を投げてみましょう。それによって相手は今自分がそれを嫌だと思った原因を考え始めます。すると、実は思いもよらない原因によって嫌だと感じていることに気付くこともあります。例えば、どのボタンが何の機能であるのか理解してなかっただけとか・・・。

といった具合で、せっかく対面でヒアリングを行うのですから、バイアスを全て取り払って「なんで○○なんですか?」「どうして○○だとダメなんですか?」と、仮説がすでにある部分であってもガンガン掘り下げていきましょう。仮説検証なんかオフィスに帰ってから議事録とにらめっこしてじっくりやればいいんです。

表面的課題と本質的課題を見極めよう

課題には表面的な課題と本質的な課題があります。ヒアリングで真に探らなければならないのは本質的な課題に至るヒントのほうです。

表面的な課題というのは、『複合的な悪条件によって現出した課題の最も目立つ一側面』だと私は定義しています。ユーザーが最初に口にする課題はこの表面的な課題であることが大半だと思います。この本質的な課題と表面的な課題の関係性は、ちょうど本音と建前の関係性と同じようなものだと思うのですが、建前をいくら集めても本音に至れないのと同様に、表面的な課題をいくら議事録にしたためてもなかなか本質的な課題に至ることはできません。だからこそ「なるほど。」とか言ってインテリぶって受け流さずに「それはなんでですか?」と掘りすすめる必要があるのです。掘れば掘るほど本質に近づいて行けるのです。

このように、ユーザーの回答の第一声が課題の核心をついていると考えるのはナンセンスだと言えるのですが、唯一例外があります。それは質問に対して断言の形で即答ができた課題です。即答かつ断言できるということはユーザーが何度もその課題に直面した結果解決策を自分なりに考えた証拠であり、本質的課題に極めて近い情報として扱うことができます。

ただし、ユーザーの発言が課題の本質を的確に表現しているとは限りませんので、即答された場合はチャンスと思って積極的に掘り下げて行きましょう。本質的な課題というのはユーザー自身も気付いていないことが多いので、一緒に掘り下げてあげる事で意外な事実に気付けたりするものですよ。

結果の分析とよくやりがちなミス

こうしてヒアリングから出てきたユーザーの発言の数々ですが、どの程度信用し、設計に反映したらいいのでしょうか。私なりの結論ですが、ユーザーが口にする「課題」や「解決策」は大抵ずれているので鵜呑みにしてはいけないというふうに考えています。ユーザーが言うことが正しくないということではなく、自分の直面している課題の原因を正しく言語化できないという方が正しいでしょうか。

ヒアリングの結果は分析しないと意味を成しませんが、その際にユーザーの言うことを鵜呑みにしてしまうのは危険であるという具体例をひとつ。例えば、自動販売機のユーザビリティ向上を目的としてヒアリング調査を行なったとします。そこで「お札が入りにくいです。」という意見が多かったとき、『じゃあ読み取りセンサーの感度を大幅に向上しよう!すると偽札が使われる可能性も増えるので、偽札判別機能を追加しよう!ついでに投入口の形状も変えよう!』といったように、ちょっとした改修のはずがいつのまにか巨額のプロジェクトになってしまうという事がよくよくあります。これがクソだという理由は説明しなくてもわかりますよね。

このミスを回避するには、ユーザーのペインを技術と根性で解消するよりも前にユーザーが自動販売機に求めている価値を解き明かす必要があります。私はこの例の場合「コンビニよりも時間をかけずに飲み物を手にいれることができる」ことだと解釈しました。ユーザーはお札が戻ってくると何秒かの時間を浪費するので、それが嫌だと言っているにすぎません。すると、そもそもユーザーは100円の飲み物のために(投入成功しても大量のお釣りが出る)1,000円札なんか使いたくないのだというシンプルな事実に気付くことができ、電子マネー決済の導入というソリューションに行き着くことができます。

たった一つ「なんでお札が入りにくいと困るんですか?」という掘り下げの質問ができて、ユーザーが口にする課題を鵜呑みにするのは危険であるという前提があるだけで、巨額のセンサー研究開発プロジェクトが既成の電子マネーモジュールを組み込むだけでよくなりましたね。

余談ですが、ユーザーが自動販売機に求めている価値は時間短縮であるという仮説は、実際に駅で電車がホームに入り始めてから飲み物を買ってみる体験をすればヒアリングなどしなくてもすぐに気付くことができます。自分が体験をする事の重要性はこのブログで何度も説いていますが、人間とは不思議なもので実際に体験しないとこの単純な事実になかなか気付く事ができない生き物なのです。

ユーザーヒアリングはとても大切ですが、ユーザーの意見をどのように分析し、どう活用するか?という部分はまた別の思考法やスキルが必要になります。直接的なヒアリングのテクニックではないですが、ユーザーの意見の使い方として非常に重要な項目なので、あえて備忘録として書き残してみました。機能改善やモデルチェンジのような革新性の無い開発プロジェクトが巨額の予算になる場合それはすべてクソソリューションです。大事なことなので2回言いましたが、どうぞお気を付けください。

まとめ

途中で脱線したのでテーマがよくわからなくなりましたが、我流のヒアリングの極意としては

  • 確証バイアスを取り払え!
  • 子供になったつもりで掘り下げろ!
  • ユーザーの発言は鵜呑みにはするな!

という感じでまとまるでしょうか。もう一度言いますが、ヒアリングの目的は仮説を検証するために必要な情報を集めることです。より効果的な仮説を立てるためには元にする課題が本質的なものでなくてはなりませんし、本質的な課題を探るためにはなるべく多角的なヒントが必要になります。より多くのヒントを引き出すために皆さんにお伝えしたい最終奥義は何かというと、相手と相手の領域に興味をもつことです。ヒアリングテクニックでもなんでもないですが、興味を持つことで自然に「なんで?」「どうして?」ができるようになります。聞きたい領域について自慢をさせてあげられればベストですね。体感的には、相手8割自分2割くらいの割合で相手にずっと喋らせ続けるのが理想のバランスだと思います。これだけ喋っていれば本音がボロボロ出てきてヒントもたくさん手に入りますので、より精度の高い仮説を持って改善に臨むことができるでしょう。

ヒアリングが上手になりたい皆さん、まずは冒頭で挙げた3大落とし穴を意識しながらテーマを決めて近くの同僚とロールプレイングしてみてはいかがでしょう。バイアスをうまくコントロールできるようになったら、ヒアリング以外でも強みを発揮できますので是非マスターしてみてください!