目次
WEBサイトは点ではなく、線で考える。
私はWEBサイトやWEBサービスの画面設計を考える時、常に点ではなく、線で考えるようにしています。導“線”設計というくらいなので線で考えるのが当然だろうという声が聞こえそうですが、UI・ナビゲーション等のビジュアルデザインやその上流工程である画面設計をしていると割と陥りがちなのが点で使いやすさを仮定してしまう事です。
要するにそのページ内で使いやすいであろう形を仮定してデザインしてしまうことで、WEBサイト・WEBサービス全体で見た時に調和が乱れていたり、配置の持つ意味が微妙にブレていたりするという事が有り得るという事です。気を付けていても割とよく陥りがちな部分なので、UI・ナビゲーションを含めた全体の導線設計をする際には十分注意したいところです。
駅から学ぶ導線設計
そこで本題ですが、そういったユーザーインターフェースを含めた導線全体の設計として情報アーキテクチャの考え方が使われているものが身近なところにもあります。私がここで参考例として挙げたいのは、電車の駅・ホームです。
情報アーキテクチャはWEBに限った技術ではありません。むしろWEBが世界に広がるずっと前から実践されてきました。電車の駅を利用するユーザーというのは、その特性がWEBサイトやWEB サービスを利用するユーザーと似ていると思います。例えば、駅の利用者は「目的地に向かう電車に乗りたい」という明確な目的は持ちながら、どういう経路で歩いて行けばそこにたどり着くのかというのは予め決めてはおらず、歩きながら考えているという部分であったり、常に歩きながら移動しているため、一つの情報に触れる時間が数秒~1分未満と非常に短い点などです。
そこで駅のユーザー(乗客)を誘導するための導線として用意されているのが、案内看板です。特に、乗り換え案内看板は先述の「点ではなく線で導線を考える事」に最も特化したツールであると私は考えています。
たとえば、これは東京駅の駅案内板ですが、改札を入って最初に目にする案内板に示されているのは、なになに線というざっくりとした路線の分類だけです。これだけでは詳細な行先が良く分かりませんが、目的の駅がどの路線に属しているのか分かっていればその路線を目指して進んでいくことが可能になります。次に目に留まるのは、乗降ホームへの階段に設置された案内板です。先程の路線案内板に示された番号に追加情報として、今度は停車する主要な駅名が書かれています。乗客は目的の駅が上下線どちらの方面に存在しているのかをここで初めて認知します。そして最後は次の電車が何時何分に到着するかを示す発車時刻案内板です。
こういった具合で、駅のホームというのは入口から全ての情報を羅列せず、乗客の導線とフローに合わせて適切な情報を出し分ける事によって、煩雑な情報を整理し、ファインダビリティを向上しているのです。
細かい部分で言うと駅の利用者は改札に入った時点で、まず離脱する事は無いので、WEBのユーザーと少々性質が違うのですが、目的の場所に辿り着ける為の情報を適切に提示し、いち早くユーザーを誘導するという目的を達成するためには、WEBと同様に情報アーキテクチャの考え方が必要不可欠となるのです。
まとめ
今回は電車の駅を例に挙げましたが、その他にも家電量販店や図書館など、ユーザーの導線設計に情報アーキテクチャの考え方を生かしている施設は色々あります。使いやすいWEBからUI/UXや画面設計を学ぶのも大事だと思いますが、たまには街を歩きながら、ちょっといつもと違った視点で物事を観察してみる事も大事なのではないでしょうか。
全ての物には意味があります。常に「なんでこうなっているんだろう?」と考えながら歩いてみると、世界がちょっとだけ面白く見えるのでオススメですよ。