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酔いどれデザイン日誌 - Drunken Design Diary -

都内でデザインファームを営む酔っ払いが、UI/UX設計やデザイン思考論を書き殴ります。

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オンボーディングのUXデザインは3つの接客力で決まる

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(この記事の読了目安:3~5分)

こんにちは、UXデザイナーのおりです。皆さんはオンボーディングという言葉をご存知ですか?

オンボーディングとは、スマートフォンアプリやWebサービスなどで初めて利用したユーザーを定着させる為に施す諸々のプロセスを指します。今回は、私が趣味でよく行く中古カメラ屋の接客から学び取った、良いオンボーディングデザインのコツを皆さんにご紹介します。

目次

接客からオンボーディングのコツを知る

私は最近、趣味でオールドレンズを使った写真撮影を楽しんでいます。その関係でよく中古カメラ屋へ出かけるのですが、これまで訪れた十数店舗のカメラ屋は、見事なまでに「良い接客」と「ダメな接客」に分かれていました。まず、ダメな方から紹介します。

ダメな接客その1:客を無視する。

これは論外です。逆に居心地がよくて好きだという人も居ますが、接客という点ではスタート地点にも立っていません。ちなみに普通のカメラ屋は大抵どこも客を無視します・・・。オンボーディングに当てはめると、利用開始した瞬間何もせず放置するのと同じです。

ダメな接客その2:客にイキる。

飲食店の接客などでは有り得ませんが、趣味性の強いカメラ屋などでは初心者に対して店主が横柄な態度を取るのが結構当たり前です。ハッキリ言って不快以外の何物でもありませんし、二度と行きたくなくなります。Webサービスなどに当てはめると、既存ユーザーの当たりが強いサービスなどが当てはまるでしょうか。そういう傾向のあるサービスの運営者は、初心者と熟練者を一定期間隔離するなどの措置が必要です。これは、オンラインゲームなどでは割と定石のやり方です。

ダメな接客その3:必要以上に絡んでくる。

量販店系では多い接客のやり方です。何かお探しですか?お試しになられますか?これがオススメですよ?こういった無駄なレコメンドは、客にとってストレスでしかありません。最近オンボーディングデザインとして扱われているものの中には、こういった過剰なチュートリアルがトレンドとして含まれているように感じます。UXデザインの観点から見ると、これはまるでダメだと思いますが。

良いオンボーディングを実現する3つの接客力

散々けなしましたが、カメラ屋がみんな酷い接客なわけではありません。次は良いと思った接客を紹介します。正直、とある恵比寿の中古カメラ屋さんのおかげで、今どっぷりレンズ沼にハマっていると言っても過言ではありません。その店に対する私のLTVは、相当な額になるでしょう。次に紹介する良い接客は、ほぼそのお店から学んだ事です。

接客力その1:客の話を聞く。

普通の事ですね。あれこれオススメする前に、客が何を求めているのか探ってレスポンスを返すべきです。ただ重要なのは、聞き方です。「へー」とか「そうなんですかー」とかはダメです。私が良いなと感じた恵比寿のお店は、自分の知っている知識領域のちょっと外側を利用者の立場に立って絶妙に答えてくれました。お店の人はある種、専門家なわけですから知識領域が広いのは当然なのですが、あんまり高度なことを言われても初心者である私はちょっと引いてしまいます。ちょっと外側というレベル感の調整が、あのお店だけ絶妙でした。

接客力その2:客と一緒に楽しむ。

これが出来ているカメラ屋は、正直言って恵比寿のお店だけでした。一般的に、Webサービスやアプリの良さを如何に早く知ってもらうかがオンボーディングデザインの真髄と言われていますが、果たしてそれだけでしょうか?私は、そのサービスを一緒になって楽しめるかが最重要だと思っています。何が違うかと言われそうですが、視点がまるで違います。「良さを知ってもらう」というのは、客と店がゲストとホストの関係になっており、対等ではありません。一方、「一緒に楽しむ」というのは、客と店、どちらもプレーヤーなのです。これをオンボーディングのプロセスに落とし込むとするならば、前者がチュートリアルで、後者が既存サークルへの巻き込みです。こんなに便利で楽しいWebサービスをみんなでやってます!あなたも仲間に入ろうよ!といった内容を、嫌味なく初回起動時に伝えられれば、使い方など説明しなくても客は勝手にファンになると思います。現に成功しているWebサービスやゲームの殆どは、運営会社と既存ユーザーと新規ユーザーが非常にラフなやりとりをして一緒に楽しんでいるように感じますね。

接客力その3:お金を要求しない。

めちゃくちゃなことを言っている事は自覚しています。でも、恵比寿のカメラ屋はそうでした。店中のレンズを試写し、数時間も世間話をして、散々拘束したにも関わらず「いかがですか?」というセリフを一言も発しませんでした。何も買わないで立ち去る事を気持ちよく認めてくれます。そんなんで商売になるのか、と思いますか?とんでもない。ちゃんと後日買い物をするどころか、他の友人にも「レンズを買うならあそこがいい」とオススメしまくってる始末です。マーケティング分野では有名なイノベーター理論や、グロースハックでおなじみのAARRRモデルにもにガッシリハマっている感覚を肌で感じました。初回の来店時に徹底的に楽しませてもらったので、2度目以降も来店したいと思えますし、何よりも楽しみを知ってしまったために、欲しくて欲しくてしょうがなくなってしまったのです。車のディーラーとかでも同じかもしれませんね。最終的に一番多くのお金を落とすのは内的トリガーによる自発的な課金なのではないでしょうか。

今ではなく利用期間全体の体験をデザインする

現在オンボーディングのノウハウとして語られている事の多くは、初回起動という一時的な接点をどう乗り切るか?という部分にフォーカスしているように感じます。しかしそれは、今後Webサービスやスマートフォンアプリを使い続けて貰う為の入り口であるオンボーディングの本質ではないと思います。

私がこのブログを通じて発信しているUXデザインの思考プロセスは、点ではなく線の考え方、すなわち今この瞬間をどう乗り越えるかという「点」ではなく、この瞬間にこの先の利用期間全体の体験を「線」としてイメージさせる事が出来るかどうかに集約されるという事です。オンボーディングも、点ではなく線で考えるのが妥当なのではないでしょうか。

私は、件のカメラ屋でレンズ交換の楽しさと、それによって得られる写真撮影という行為そのものの体験的な面白さを、接客を通じて共有されました。

皆さんも身近にあるお気に入りのお店の接客を観察してみて、どうして自分がここの店に通っているのか改めて考え、理解し、皆さんのプロダクトのオンボーディングデザインに役立ててみてください。思いもよらない理由が見つかるかもしれませんよ。