読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

酔いどれデザイン日誌 - Drunken Design Diary -

都内でデザインファームを営む酔っ払いが、UI/UX設計やデザイン思考論を書き殴ります。

都内でデザインファームを営む酔っ払いが、UI/UX設計やデザイン思考論を書き殴ります。

UXデザインは冷血であるべきか熱血であるべきか

UX 考え方

先日、IAシンキングの著者であるネットイヤーグループの坂本貴史さんと対談する機会がありました。昨年から今年にかけてUXデザインの専門家の方々とお話する機会が多くなりましたが、色々な方の考え方に接する中で、UXデザインというバズワードの本質がある程度見えてきた気がします。

その中で、表題に掲げた熱血・冷血というテーマは私の中の永遠のジレンマであり、今後も悩み続けるであろうテーマだったので、一度整理する必要がありました。

我こそはUXデザインの専門家だ!という諸兄に是非ご一読頂き、可能であればご意見をいただきたいテーマでございますので、しばしばかりお付き合いくださいませ。

目次

あなたのUXデザインは、何のためのデザイン?

あなたが普段行っているUXデザインの思考プロセスを用いて行う仕事に当てはめて、パっと思い浮かべてみてください。

イメージしましたか?

ここで利用者満足度追求のためと答えた人、あなたは熱血派のUXデザイナーです。そして、私の仲間でもあります。ぜひ仲良くしましょう!

対して、課題解決のためと答えた人、あなたは冷血派のUXデザイナーです。これも私の仲間です。仲良くしましょう。

恐らくこれ以外にも数パターン、よくある回答があるかと思いますが、ここで挙げた熱血派と冷血派を大きく分かつ最大のポイントは、気持ちに主軸を置くか、数値に主軸を置くかという部分です。

分かりづらいですか?もっと単純化すると、見えないものを主軸に置くか、見える物を主軸に置くかの違いです。

予め断わっておきますが、熱血が良い、冷血が悪い、という事が言いたいのではありません。この相反する属性が混在しているからこそ、UXデザインというバズワードは面白く、奥深く、そして様々な人の心を惹きつけるのだと思います。では、熱血なUXデザインと冷血なUXデザインって何なのさ?という具体例を紹介していきます。

熱血なUXデザインとは

私の定義する熱血なUXデザインは、見えないものに主軸を置くという考え方の軸に基づいて構築されるものです。見えないものとは具体的に言うと、人の感情、満足度、潜在的ニーズなどです。

これら目に見えないものを指標に掲げるのは、ビジネスとしてやっていく上では非常に難しいものだと言えます。しかしながら、凡そ全てのデザイナーに「UXデザインとは何か?」と問うと、「ユーザー満足度を高める為のデザイン」のように回答するでしょう。そして、それを聞いたステークホルダー達もおおよそ頭が堅くない限りは理解し、受け入れます。何故ならば、ユーザー満足度向上の先には利益向上や数値改善などの良い結果が紐づいて見えている為です。

では、熱血派のUXデザイナーたちはどうやって満足度向上のための施策を考えるのでしょうか?私の知りうる限り、綿密なペルソナ設計に基づいた仮想ユーザーを設定し、ユーザー体験向上のためのカスタマージャーニーマップや各種フレームワークなどを用いて仮説立てを行います。そうです、全てなのです。

答えが無限大に広がっているが故、全てが仮説でしかないというのが熱血派UXデザインの面白い部分であり、最大のデメリットとなります。

しかしながら、後述する冷血派のUXデザインも施策自体は仮説であることに変わりはなく、その確実性が大きく異なるという部分を除いてはほぼ同じプロセスを歩みます。熱血派のUXデザインも全部が経験・勘・度胸に基づく漢気溢れる当てずっぽうというわけでもないので、そこだけ誤解しないでください。

冷血なUXデザインとは

対して冷血なUXデザインの定義は、見えているものに主軸を置くという考え方の軸に基づいて構築されるものです。たとえば、アナリティクスのデータ、ユーザーアンケート、顕在化したニーズなどがそうです。冷血というと聞こえが悪いのでCool UX Designとでもしましょう。

既に出ている数値や意見に基づいて改善策を練る事が主な解決手段となり、デザイナーの思考回路としては最速で最善の解決策を発見する為に細かくPDCAを回し続けるといったものになります。これはリーンスタートアップやアジャイル開発に代表される、近年主流となっている手法を踏襲した、非常に合理的かつ確実性の高いUXデザインの在り方であり、ビジネスとして指標を算出しやすいという大きなメリットがあります。

一見良い事ずくめなCool UX Designですが、実はこのやり方には重大な欠点があります。それは、顕在化したニーズしか拾う事が出来ないという問題点です。どういう事でしょうか?

例えば、とある喫茶店に対する利用者アンケートをとったとします。アンケートの結果、喫煙可の席数の少なさが最も顧客満足度に影響している指標だという結果が出ました。これに対するユーザー体験の改善策は簡単です。喫煙席を増設すれば良いのです。しかし、本当にそれで良いのでしょうか?実はアルバイトの店員がめちゃくちゃ可愛いかったので、わざわざこの喫茶店に通っていた。なんて事もザラです。人間なんてそういう生き物です。しかしアンケートだけの情報では、そんな潜在的で深層心理的なニーズを知る由もありません。この例は極端ですが、見えている基準を指標としたUXデザインのプロセスでは、確実性の裏でこういった見えない機会損失がいくつも発生するというデメリットを孕んでいます。

熱く考えて、クールにキメよう

見えているものに頼りすぎてはいけないし、見えないものを追いすぎてもいけない。このジレンマからは恐らく一生解放される事が無いのでは?と思っています。

とはいえ、やってみないと分からない。というのは、HotであろうがCoolであろうが同じ事です。大事なのはそのバランス感覚であると私は考えます。Hotな部分を詰め過ぎても机上の空論で無駄に時間が浪費されて行きますし、かといってHotな部分を完全に切り捨ててしまってはイノベーションが起こりません。私がお話させて頂いた優れたUXデザイナーの方々は皆、Hotな部分とCoolな部分を併せ持ち、場合に応じて使い分ける事によって「ユーザー体験」という目に見えているけど実は見えていない曖昧なものを上手くコントロールしているなと感じました。(もちろん傾向に個人差はありますが)

色々なUXデザイナーの方と対談した中で見えてきて、私なりにまとめて再定義したHot UX DesignとCool UX Design。いかがでしょうか?自分はどちらの傾向が強いか、どの程度Hotな部分を残すかなど、改めて自分の中の「UXデザイン」を考え直すための参考にして頂けたのであれば幸いです。

私達はUXデザインというバズワードを通じて、人間の本質的な部分に触れる権利を与えられています。これをただの流行で終わらせるのではなく、概念や考え方の軸として自らの血肉として染み付かせ、実際のビジネスの中で活用していこうじゃありませんか。使わない知識はただの重いだけの鉄クズです。使って初めて、それはあなたの武器になります。

熱く考えて、クールにキメる。それが私の出した現時点のUXデザインに対する回答です。どうですか?皆さんも、是非。

 

IAシンキング Web制作者・担当者のためのIA思考術

IAシンキング Web制作者・担当者のためのIA思考術

  • 作者: 坂本貴史,宮崎綾子,長谷川恭久
  • 出版社/メーカー: ワークスコーポレーション
  • 発売日: 2011/03/29
  • メディア: 単行本
  • 購入: 12人 クリック: 167回
  • この商品を含むブログ (10件) を見る