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酔いどれデザイン日誌 - Drunken Design Diary -

都内でデザインファームを営む酔っ払いが、UI/UX設計やデザイン思考論を書き殴ります。

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フリーミアムモデルで機能制限をしてはいけない理由

UX サービスデザイン フリーミアム ビジネスモデル

フリーミアムモデルなんてどこもやってるよ。と思った方、なんとなく無料版と有料版を作ればそれがフリーミアムモデルだと思っていませんか?上の図のような○×の表を出して差別化をするタイプのフリーミアムモデルは、これからご説明する考え方に則ると非常にイケてない代物であると言えます。どういうことでしょうか?

フリーミアムモデルでググると、以下のような説明文が出てきます。

フリー(無料)ビジネスの一つ。無料のサービスを多数のユーザーに提供し、高機能または追加された特別な有償サービスによって収益を得るビジネスモデル。とりわけウェブ上では、95%が無料ユーザーであっても5%の有料ユーザーがいればビジネスは成立することから、「5%ルール」を基本としている。

(出典:コトバンク)

そのままの意味で受け取ると、どこにでもある「基本無料サービス」は全てフリーミアムモデルを踏襲しているように見えます。しかし、サービスデザインを考えていく中で「基本無料」を行うには気を付けるべき点がある事に気付きました。

目次

イケてないフリーミアムに共通すること

いつもよく使うアプリでちょうどフリーミアムモデルの導入に失敗していたモデルケースがありました。皆さんもよく使うでしょう乗り換え検索アプリのジョルダンです。(これからちょっとだけ否定的な事を書きますが、ジョルダンはいつも使っていて大変お世話になってるので嫌いではありません。)

このアプリ、普通に無料だと思って使っていますが、実は有料のプレミアム機能があるのをご存知でしたか?プレミアム会員になると何が出来るかというと色々あるのですが、共通して言えることがあります。それは、無料版が有料版の機能制限版であるという事です。

無料なのだから機能が制限されていて当然だろうと思いますか?それは経営側の視点です。ユーザーからすると基本無料のサービスは基本機能が一通り全て無料であると考えています。つまり、乗り換えに関する機能は全て無料使えて然るべきだと考えているのです。

ジョルダンの基本無料サービスの中には、制限してはいけない機能が多く含まれていました。その中のひとつが、「1本前・1本後検索機能」です。電車に乗った瞬間に目的地まで検索をかけて所要時間を調べる事、ありますよね?そんな時に便利なのが、1本前検索です。乗った後に検索すると次の電車の結果が表示されるため、自分が乗っている電車を調べるには1本前検索を使うのはごく自然な流れなのですが、ちょっと前まで1本前検索機能は有料機能でした。流石にまずいと思ったのか、今は無料機能として開放されています。(2015年2月現在)

これの何がまずいかというと、ユーザーの使用頻度が高い(=標準機能だと考えているもの)を制限してしまった事でユーザーがやりたい事に対して無理やり不便を強いているという点です。以上のような理由で、無料機能が有料機能の制限版であるフリーミアムモデルは、イケてないと思うのです。

人間は得よりも損を過大に感じるバイアスがかかるという事は、行動経済学の分野で証明されている通りです。ユーザーに不便を強いるような機能制限は何の利益ももたらしません。表組みで無料会員と有料会員の制限機能一覧を○と×で並べたページ、ありませんか?あなたのサービスで、もしそのような機能制限によるフリーミアムが導入されている場合、表現方法を再度検討してみる事をおすすめします。

たとえば、表現を○×の機能制限ではなく、上限増加のような形に変えてみるなどが考えられます。それだけでユーザーの印象は大きく異なる筈です。

人は満足感に課金する

以前ビジネスとは何かの記事でも述べましたが、人間が自発的にお金を支払うのは自分が求める期待、欲求、そういったものが満たされた時のみだと考えています。しかし、不満を意図的につくりだしてはいけません。それはいわば、食糧を全て買い上げて枯渇させた土地にマーケットをひらくようなものです。暴虐以外のなにものでもありませんよね。

世の中でフリーミアムモデルとされてきた、制限されていた機能の解放を有料版とするような課金モデルは、単なる押し売りでしかなく、全くもってナンセンスだと主張させて頂きます。

制限版ではなく、強化版。そして満足感に主軸を置いたフリーミアムモデルを設計してみてはどうでしょう。

基本無料は腹七分目を狙う

飲み会のコース料理がちょっとだけ足りなくて1品だけ追加注文したこと、ありますよね?概ね満足なんだけど、あともうちょっとだけ食べたい。その感覚がフリーミアムモデルの無料と有料の線引きポイントだと思います。コース料理は、何かの料理の制限版ではないですよね?コースはコースの料金として適正なものを出しきっています。追加で課金をするかどうかは、結局はユーザー個々人の腹具合次第なのです。

つまるところ、全ての機能を使い切って腹七分目のサービスを無料で提供していれば、おのずと有料で追加注文するユーザーが出てくるのではないでしょうか。元々小食なユーザー(95%と言われている層)は、何をやっても課金しないです。だって腹七分目に調整して盛ったご飯で満腹になっているのですから。

今後経営陣から「フリーミアムモデル」という単語が出てきた際は、それが制限版の機能を無料とする事を指していないか意識してみてください。そして、満足感に主軸を置いたフリーミアムモデルに置き換えられないかどうか、今一度考えてみてはいかがでしょうか。きっとそちらの考え方で生まれた課金モデルが、「イケてるフリーミアムモデル」だと思います。