酔いどれデザイン日誌 - Drunken Design Diary -

都内でデザインファームを営む酔っ払いが、UI/UX論やデザイン思考論を書き殴ります。

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フリーミアムモデルで機能制限をしてはいけない理由

フリーミアムモデルなんてどこもやってるよ。と思った方、なんとなく無料版と有料版を作ればそれがフリーミアムモデルだと思っていませんか?上の図のような○×の表を出して差別化をするタイプのフリーミアムモデルは、これからご説明する考え方に則ると非常にイケてない代物であると言えます。どういうことでしょうか?

フリーミアムモデルでググると、以下のような説明文が出てきます。

フリー(無料)ビジネスの一つ。無料のサービスを多数のユーザーに提供し、高機能または追加された特別な有償サービスによって収益を得るビジネスモデル。とりわけウェブ上では、95%が無料ユーザーであっても5%の有料ユーザーがいればビジネスは成立することから、「5%ルール」を基本としている。

(出典:コトバンク)

そのままの意味で受け取ると、どこにでもある「基本無料サービス」は全てフリーミアムモデルを踏襲しているように見えます。しかし、サービスデザインを考えていく中で「基本無料」を行うには気を付けるべき点がある事に気付きました。

目次

イケてないフリーミアムに共通すること

いつもよく使うアプリでちょうどフリーミアムモデルの導入に失敗していたモデルケースがありました。皆さんもよく使うでしょう乗り換え検索アプリのジョルダンです。(これからちょっとだけ否定的な事を書きますが、ジョルダンはいつも使っていて大変お世話になってるので嫌いではありません。)

このアプリ、普通に無料だと思って使っていますが、実は有料のプレミアム機能があるのをご存知でしたか?プレミアム会員になると何が出来るかというと色々あるのですが、共通して言えることがあります。それは、無料版が有料版の機能制限版であるという事です。

無料なのだから機能が制限されていて当然だろうと思いますか?それは経営側の視点です。ユーザーからすると基本無料のサービスは基本機能が一通り全て無料であると考えています。つまり、乗り換えに関する機能は全て無料使えて然るべきだと考えているのです。

ジョルダンの基本無料サービスの中には、制限してはいけない機能が多く含まれていました。その中のひとつが、「1本前・1本後検索機能」です。電車に乗った瞬間に目的地まで検索をかけて所要時間を調べる事、ありますよね?そんな時に便利なのが、1本前検索です。乗った後に検索すると次の電車の結果が表示されるため、自分が乗っている電車を調べるには1本前検索を使うのはごく自然な流れなのですが、ちょっと前まで1本前検索機能は有料機能でした。流石にまずいと思ったのか、今は無料機能として開放されています。(2015年2月現在)

これの何がまずいかというと、ユーザーの使用頻度が高い(=標準機能だと考えているもの)を制限してしまった事でユーザーがやりたい事に対して無理やり不便を強いているという点です。以上のような理由で、無料機能が有料機能の制限版であるフリーミアムモデルは、イケてないと思うのです。

人間は得よりも損を過大に感じるバイアスがかかるという事は、行動経済学の分野で証明されている通りです。ユーザーに不便を強いるような機能制限は何の利益ももたらしません。表組みで無料会員と有料会員の制限機能一覧を○と×で並べたページ、ありませんか?あなたのサービスで、もしそのような機能制限によるフリーミアムが導入されている場合、表現方法を再度検討してみる事をおすすめします。

たとえば、表現を○×の機能制限ではなく、上限増加のような形に変えてみるなどが考えられます。それだけでユーザーの印象は大きく異なる筈です。

人は満足感に課金する

以前ビジネスとは何かの記事でも述べましたが、人間が自発的にお金を支払うのは自分が求める期待、欲求、そういったものが満たされた時のみだと考えています。しかし、不満を意図的につくりだしてはいけません。それはいわば、食糧を全て買い上げて枯渇させた土地にマーケットをひらくようなものです。暴虐以外のなにものでもありませんよね。

世の中でフリーミアムモデルとされてきた、制限されていた機能の解放を有料版とするような課金モデルは、単なる押し売りでしかなく、全くもってナンセンスだと主張させて頂きます。

制限版ではなく、強化版。そして満足感に主軸を置いたフリーミアムモデルを設計してみてはどうでしょう。

基本無料は腹七分目を狙う

飲み会のコース料理がちょっとだけ足りなくて1品だけ追加注文したこと、ありますよね?概ね満足なんだけど、あともうちょっとだけ食べたい。その感覚がフリーミアムモデルの無料と有料の線引きポイントだと思います。コース料理は、何かの料理の制限版ではないですよね?コースはコースの料金として適正なものを出しきっています。追加で課金をするかどうかは、結局はユーザー個々人の腹具合次第なのです。

つまるところ、全ての機能を使い切って腹七分目のサービスを無料で提供していれば、おのずと有料で追加注文するユーザーが出てくるのではないでしょうか。元々小食なユーザー(95%と言われている層)は、何をやっても課金しないです。だって腹七分目に調整して盛ったご飯で満腹になっているのですから。

今後経営陣から「フリーミアムモデル」という単語が出てきた際は、それが制限版の機能を無料とする事を指していないか意識してみてください。そして、満足感に主軸を置いたフリーミアムモデルに置き換えられないかどうか、今一度考えてみてはいかがでしょうか。きっとそちらの考え方で生まれた課金モデルが、「イケてるフリーミアムモデル」だと思います。

オンボーディングのUXデザインは3つの接客力で決まる

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(この記事の読了目安:3~5分)

こんにちは、UXデザイナーのおりです。皆さんはオンボーディングという言葉をご存知ですか?

オンボーディングとは、スマートフォンアプリやWebサービスなどで初めて利用したユーザーを定着させる為に施す諸々のプロセスを指します。今回は、私が趣味でよく行く中古カメラ屋の接客から学び取った、良いオンボーディングデザインのコツを皆さんにご紹介します。

目次

接客からオンボーディングのコツを知る

私は最近、趣味でオールドレンズを使った写真撮影を楽しんでいます。その関係でよく中古カメラ屋へ出かけるのですが、これまで訪れた十数店舗のカメラ屋は、見事なまでに「良い接客」と「ダメな接客」に分かれていました。まず、ダメな方から紹介します。

ダメな接客その1:客を無視する。

これは論外です。逆に居心地がよくて好きだという人も居ますが、接客という点ではスタート地点にも立っていません。ちなみに普通のカメラ屋は大抵どこも客を無視します・・・。オンボーディングに当てはめると、利用開始した瞬間何もせず放置するのと同じです。

ダメな接客その2:客にイキる。

飲食店の接客などでは有り得ませんが、趣味性の強いカメラ屋などでは初心者に対して店主が横柄な態度を取るのが結構当たり前です。ハッキリ言って不快以外の何物でもありませんし、二度と行きたくなくなります。Webサービスなどに当てはめると、既存ユーザーの当たりが強いサービスなどが当てはまるでしょうか。そういう傾向のあるサービスの運営者は、初心者と熟練者を一定期間隔離するなどの措置が必要です。これは、オンラインゲームなどでは割と定石のやり方です。

ダメな接客その3:必要以上に絡んでくる。

量販店系では多い接客のやり方です。何かお探しですか?お試しになられますか?これがオススメですよ?こういった無駄なレコメンドは、客にとってストレスでしかありません。最近オンボーディングデザインとして扱われているものの中には、こういった過剰なチュートリアルがトレンドとして含まれているように感じます。UXデザインの観点から見ると、これはまるでダメだと思いますが。

良いオンボーディングを実現する3つの接客力

散々けなしましたが、カメラ屋がみんな酷い接客なわけではありません。次は良いと思った接客を紹介します。正直、とある恵比寿の中古カメラ屋さんのおかげで、今どっぷりレンズ沼にハマっていると言っても過言ではありません。その店に対する私のLTVは、相当な額になるでしょう。次に紹介する良い接客は、ほぼそのお店から学んだ事です。

接客力その1:客の話を聞く。

普通の事ですね。あれこれオススメする前に、客が何を求めているのか探ってレスポンスを返すべきです。ただ重要なのは、聞き方です。「へー」とか「そうなんですかー」とかはダメです。私が良いなと感じた恵比寿のお店は、自分の知っている知識領域のちょっと外側を利用者の立場に立って絶妙に答えてくれました。お店の人はある種、専門家なわけですから知識領域が広いのは当然なのですが、あんまり高度なことを言われても初心者である私はちょっと引いてしまいます。ちょっと外側というレベル感の調整が、あのお店だけ絶妙でした。

接客力その2:客と一緒に楽しむ。

これが出来ているカメラ屋は、正直言って恵比寿のお店だけでした。一般的に、Webサービスやアプリの良さを如何に早く知ってもらうかがオンボーディングデザインの真髄と言われていますが、果たしてそれだけでしょうか?私は、そのサービスを一緒になって楽しめるかが最重要だと思っています。何が違うかと言われそうですが、視点がまるで違います。「良さを知ってもらう」というのは、客と店がゲストとホストの関係になっており、対等ではありません。一方、「一緒に楽しむ」というのは、客と店、どちらもプレーヤーなのです。これをオンボーディングのプロセスに落とし込むとするならば、前者がチュートリアルで、後者が既存サークルへの巻き込みです。こんなに便利で楽しいWebサービスをみんなでやってます!あなたも仲間に入ろうよ!といった内容を、嫌味なく初回起動時に伝えられれば、使い方など説明しなくても客は勝手にファンになると思います。現に成功しているWebサービスやゲームの殆どは、運営会社と既存ユーザーと新規ユーザーが非常にラフなやりとりをして一緒に楽しんでいるように感じますね。

接客力その3:お金を要求しない。

めちゃくちゃなことを言っている事は自覚しています。でも、恵比寿のカメラ屋はそうでした。店中のレンズを試写し、数時間も世間話をして、散々拘束したにも関わらず「いかがですか?」というセリフを一言も発しませんでした。何も買わないで立ち去る事を気持ちよく認めてくれます。そんなんで商売になるのか、と思いますか?とんでもない。ちゃんと後日買い物をするどころか、他の友人にも「レンズを買うならあそこがいい」とオススメしまくってる始末です。マーケティング分野では有名なイノベーター理論や、グロースハックでおなじみのAARRRモデルにもにガッシリハマっている感覚を肌で感じました。初回の来店時に徹底的に楽しませてもらったので、2度目以降も来店したいと思えますし、何よりも楽しみを知ってしまったために、欲しくて欲しくてしょうがなくなってしまったのです。車のディーラーとかでも同じかもしれませんね。最終的に一番多くのお金を落とすのは内的トリガーによる自発的な課金なのではないでしょうか。

今ではなく利用期間全体の体験をデザインする

現在オンボーディングのノウハウとして語られている事の多くは、初回起動という一時的な接点をどう乗り切るか?という部分にフォーカスしているように感じます。しかしそれは、今後Webサービスやスマートフォンアプリを使い続けて貰う為の入り口であるオンボーディングの本質ではないと思います。

私がこのブログを通じて発信しているUXデザインの思考プロセスは、点ではなく線の考え方、すなわち今この瞬間をどう乗り越えるかという「点」ではなく、この瞬間にこの先の利用期間全体の体験を「線」としてイメージさせる事が出来るかどうかに集約されるという事です。オンボーディングも、点ではなく線で考えるのが妥当なのではないでしょうか。

私は、件のカメラ屋でレンズ交換の楽しさと、それによって得られる写真撮影という行為そのものの体験的な面白さを、接客を通じて共有されました。

皆さんも身近にあるお気に入りのお店の接客を観察してみて、どうして自分がここの店に通っているのか改めて考え、理解し、皆さんのプロダクトのオンボーディングデザインに役立ててみてください。思いもよらない理由が見つかるかもしれませんよ。

ブログタイトルを変えました

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ブログ立ち上げ当初、ちょうど情報設計(インフォメーションアーキテクチャ)について研究していた時期というのもあり、本ブログのタイトルにずっとIAを冠していましたが、研究と実践が進むにつれてIAはUXデザインという、もっとはるかに大きな枠組みの中のほんの一部だという事に気付き、ブログのテーマとして掲げるには不適切であるという想いが強くなってきました。

更にこの度2度目の転職をし、自称ではなく正式にUXデザイナーとして働ける環境に移る事が出来たため、これを機にブログタイトルを「とあるWEBデザイナーの情報設計(インフォメーションアーキテクト)」から「とある企画屋の体験設計(ユーザーエクスペリエンスデザイン)」へと変更致します。

タイトルからWEBデザイナーを外した意図としては、既に扱う領域がWEBだけに留まらなくなってきたという事と、次の職場がWEBデザインというよりもサービスデザインやアプリ開発に寄っているという事が主な要因です。では何故、企画屋か?というと、私の原点は常にコンセプトメイキングから始まるプランニングである為、企画屋魂みたいなものは忘れたくない、という想いを込めて、WEBデザイナーの代わりに企画屋という文字を据えさせて頂きました。

扱うテーマや内容は何も変わらないのですが、IAを基準に据えるのではなく、UXデザインとプランニングを主として扱っていければ良いかなと考えていますので、これからも何卒よろしくお願いいたします。

転職に関するエントリーは、また別の機会にでも書ければと思います。

UXデザインは冷血であるべきか熱血であるべきか

先日、IAシンキングの著者であるネットイヤーグループの坂本貴史さんと対談する機会がありました。昨年から今年にかけてUXデザインの専門家の方々とお話する機会が多くなりましたが、色々な方の考え方に接する中で、UXデザインというバズワードの本質がある程度見えてきた気がします。

その中で、表題に掲げた熱血・冷血というテーマは私の中の永遠のジレンマであり、今後も悩み続けるであろうテーマだったので、一度整理する必要がありました。

我こそはUXデザインの専門家だ!という諸兄に是非ご一読頂き、可能であればご意見をいただきたいテーマでございますので、しばしばかりお付き合いくださいませ。

目次

あなたのUXデザインは、何のためのデザイン?

あなたが普段行っているUXデザインの思考プロセスを用いて行う仕事に当てはめて、パっと思い浮かべてみてください。

イメージしましたか?

ここで利用者満足度追求のためと答えた人、あなたは熱血派のUXデザイナーです。そして、私の仲間でもあります。ぜひ仲良くしましょう!

対して、課題解決のためと答えた人、あなたは冷血派のUXデザイナーです。これも私の仲間です。仲良くしましょう。

恐らくこれ以外にも数パターン、よくある回答があるかと思いますが、ここで挙げた熱血派と冷血派を大きく分かつ最大のポイントは、気持ちに主軸を置くか、数値に主軸を置くかという部分です。

分かりづらいですか?もっと単純化すると、見えないものを主軸に置くか、見える物を主軸に置くかの違いです。

予め断わっておきますが、熱血が良い、冷血が悪い、という事が言いたいのではありません。この相反する属性が混在しているからこそ、UXデザインというバズワードは面白く、奥深く、そして様々な人の心を惹きつけるのだと思います。では、熱血なUXデザインと冷血なUXデザインって何なのさ?という具体例を紹介していきます。

熱血なUXデザインとは

私の定義する熱血なUXデザインは、見えないものに主軸を置くという考え方の軸に基づいて構築されるものです。見えないものとは具体的に言うと、人の感情、満足度、潜在的ニーズなどです。

これら目に見えないものを指標に掲げるのは、ビジネスとしてやっていく上では非常に難しいものだと言えます。しかしながら、凡そ全てのデザイナーに「UXデザインとは何か?」と問うと、「ユーザー満足度を高める為のデザイン」のように回答するでしょう。そして、それを聞いたステークホルダー達もおおよそ頭が堅くない限りは理解し、受け入れます。何故ならば、ユーザー満足度向上の先には利益向上や数値改善などの良い結果が紐づいて見えている為です。

では、熱血派のUXデザイナーたちはどうやって満足度向上のための施策を考えるのでしょうか?私の知りうる限り、綿密なペルソナ設計に基づいた仮想ユーザーを設定し、ユーザー体験向上のためのカスタマージャーニーマップや各種フレームワークなどを用いて仮説立てを行います。そうです、全てなのです。

答えが無限大に広がっているが故、全てが仮説でしかないというのが熱血派UXデザインの面白い部分であり、最大のデメリットとなります。

しかしながら、後述する冷血派のUXデザインも施策自体は仮説であることに変わりはなく、その確実性が大きく異なるという部分を除いてはほぼ同じプロセスを歩みます。熱血派のUXデザインも全部が経験・勘・度胸に基づく漢気溢れる当てずっぽうというわけでもないので、そこだけ誤解しないでください。

冷血なUXデザインとは

対して冷血なUXデザインの定義は、見えているものに主軸を置くという考え方の軸に基づいて構築されるものです。たとえば、アナリティクスのデータ、ユーザーアンケート、顕在化したニーズなどがそうです。冷血というと聞こえが悪いのでCool UX Designとでもしましょう。

既に出ている数値や意見に基づいて改善策を練る事が主な解決手段となり、デザイナーの思考回路としては最速で最善の解決策を発見する為に細かくPDCAを回し続けるといったものになります。これはリーンスタートアップやアジャイル開発に代表される、近年主流となっている手法を踏襲した、非常に合理的かつ確実性の高いUXデザインの在り方であり、ビジネスとして指標を算出しやすいという大きなメリットがあります。

一見良い事ずくめなCool UX Designですが、実はこのやり方には重大な欠点があります。それは、顕在化したニーズしか拾う事が出来ないという問題点です。どういう事でしょうか?

例えば、とある喫茶店に対する利用者アンケートをとったとします。アンケートの結果、喫煙可の席数の少なさが最も顧客満足度に影響している指標だという結果が出ました。これに対するユーザー体験の改善策は簡単です。喫煙席を増設すれば良いのです。しかし、本当にそれで良いのでしょうか?実はアルバイトの店員がめちゃくちゃ可愛いかったので、わざわざこの喫茶店に通っていた。なんて事もザラです。人間なんてそういう生き物です。しかしアンケートだけの情報では、そんな潜在的で深層心理的なニーズを知る由もありません。この例は極端ですが、見えている基準を指標としたUXデザインのプロセスでは、確実性の裏でこういった見えない機会損失がいくつも発生するというデメリットを孕んでいます。

熱く考えて、クールにキメよう

見えているものに頼りすぎてはいけないし、見えないものを追いすぎてもいけない。このジレンマからは恐らく一生解放される事が無いのでは?と思っています。

とはいえ、やってみないと分からない。というのは、HotであろうがCoolであろうが同じ事です。大事なのはそのバランス感覚であると私は考えます。Hotな部分を詰め過ぎても机上の空論で無駄に時間が浪費されて行きますし、かといってHotな部分を完全に切り捨ててしまってはイノベーションが起こりません。私がお話させて頂いた優れたUXデザイナーの方々は皆、Hotな部分とCoolな部分を併せ持ち、場合に応じて使い分ける事によって「ユーザー体験」という目に見えているけど実は見えていない曖昧なものを上手くコントロールしているなと感じました。(もちろん傾向に個人差はありますが)

色々なUXデザイナーの方と対談した中で見えてきて、私なりにまとめて再定義したHot UX DesignとCool UX Design。いかがでしょうか?自分はどちらの傾向が強いか、どの程度Hotな部分を残すかなど、改めて自分の中の「UXデザイン」を考え直すための参考にして頂けたのであれば幸いです。

私達はUXデザインというバズワードを通じて、人間の本質的な部分に触れる権利を与えられています。これをただの流行で終わらせるのではなく、概念や考え方の軸として自らの血肉として染み付かせ、実際のビジネスの中で活用していこうじゃありませんか。使わない知識はただの重いだけの鉄クズです。使って初めて、それはあなたの武器になります。

熱く考えて、クールにキメる。それが私の出した現時点のUXデザインに対する回答です。どうですか?皆さんも、是非。

 

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人はなぜ、働くのか?ビジネスとは何か?

あなたは何の為に働いていますか?

今年を終えるに当たり、自分の考えを整理する為に雑記を一つ放出します。超長いのでお正月のヒマでヒマでどうしようも無いような時にでもご一読下さい。

最近、経営やキャッシュフローについて色々と勉強をしています。恥ずかしげもなく書きますが、世の中を裏側から変えたいと割と本気で考えているので、雇われの身で目的を達成する事に限界を感じ始めている為です。表側は政治家の皆さんにでもお任せするのでよしなにやって頂ければ大丈夫です。

「でもまだ若いから」、「経験も浅いしもう少し経験を積んでからでも・・・」、そんなクソ詰まらない御託はどうでもいいんです。そういう問題じゃないんです。もっと根源的に、人は何の為に社会を形成し、経済活動を行い、何の為に働いているのか。ここを明確にするには、世の中の仕組みを理解しなくてはならない。金の流れとそれによって生じる世界への影響も敬遠せずに理解しなければならない。そう考えて投資家の方とお会いしたり、経営学セミナーに参加したりしながらヒントを探っています。

とはいえ、私は本当にまだ何も知りません。UXや情報設計についてのノウハウなんかを撒き散らせるくらいには知識も身に着け実地経験もしてきているつもりですが、それによって世界に何が成されているのか正確には認識できていません。

今こそ改めて、自分が何のために働くのかを考える時だと思いました。

「ビジネス」の意味

私がやってきた事、やろうとしている事は、恐らく金儲けではありません。しかし、紛れも無くビジネスです。ビジネスという単語が指している意味が広義に渡りすぎている為なんとも言い難いのですが、利潤を追求する事がビジネスだというのであれば、何か別の単語を作りたいと思っているくらいです。

私は経済学にはあまり明るくないのですが、ユーザーエクスペリエンスデザインや情報設計など、利用者視点でモノを考える事に関しては専門的にやってきています。その結果もたらされた利益や心理的効果も身を以て体験して来ています。ここから導き出された結論は「ビジネスとは誰かと誰かのコミュニケーションによって生まれる価値移動の集合体である」という考え方でした。ビジネスという単語で検索すると色々出てきますが、決して「感情を抜きにして利潤の追求に徹する事」が意味がビジネスの本質ではないと思っています。何故ならば、感情を抜いたり利益が出たりといったものは経済活動を行う上でのテクニックや結果のひとつであり、ビジネスそのものでは無いはずだからです。

世界にまだ無い価値を生み出すということ

感情を交えずに利益を追求するビジネスとはどういうものか?それは、リスクの伴う新しいものを作らず、安定を重んじ、今ある数字を左から右へ最大効率で動かし、利用者に支払額に応じた対価を提供するような事業です。それを提供するビジネスマンは、思考せず、でも行動力はあり、ルーチンワークを極め、経営陣の方針に従順な働き手であることが求められます。本気で問いたいです。そんな人生楽しいですか?

toBであれ、toCであれ、最終的にそのビジネスの価値を決定するのは自分以外の「人間」です。数字は結果であり単なるバロメーターです。感情抜きにしてと言いますが、感情を持たない人間が果たして居るでしょうか?投資家ですら、完全に数字だけで判断しているわけではないでしょう。

事業部長クラスのビジネスパートナーの方々とのやり取りや、ユーザーエクスペリエンスデザインにどっぷり浸かり始めてからひしひしと感じていますが、UXの向上とはすなわち、ビジネスの成功方程式を作る事に他ならないと考えられるようになりました。何故ならば、人間がお金を支払うのは自分が求める期待、欲求、そういったものが満たされた時であるためです。それは決して損得勘定ではないのです。現に、世の中で売れるサービスと呼ばれるものを思い浮かべて頂きたいのですが、どれもこれも欲求解消に伴ってエクスペリエンスの向上に最大限の注力を注いだものが思い浮かぶはずです。

では、私が本当にやりたいビジネスの姿とは何なのか。大小あれど、世界にまだ無い価値をこの世に生み出す為の諸々の活動だと今の時点では認識しています。金銭の増減が生じるのはあくまでその結果であり、世界のどれだけの人間がその価値を認めたかの証なのだと思います。

何故「世界にまだ無い価値」を生み出す必要があるのか?これも先程のUXと成功ビジネスの方程式の話で頭の中の整理がつきました。ビジネスが人と人との関わり合いの中に存在する限り、解決すべき課題は常に「自分以外の誰かの抱えた欲求」であるはずです。それが空腹なのか、退屈なのか、不健康なのかの違いに過ぎないのです。であれば、新しくビジネスを始める為に必要なアイデアは、まだ解決しきれていない人類の欲求を如何にして解決するか?に集約されるのではないでしょうか。

ここで注意したいのは、未解決欲求の解決を目的に事業を立ち上げてしまうと、欲求を解決する手段ばかりに目が行ってしまってその解決プロセスに感情が挟まらない「機械的なビジネス」になってしまうという点です。何度も言いますが、私の導き出したビジネス解釈の結論は損得勘定ではなく、人と人との関わり合いによって生じる価値移動の集合です。企業にとっての客からもたらされる価値は、金銭だけでしょうか?そうではないはずです。

進化欲求

長々と書き連ねてしまいましたが、何故働くのか?の今時点の私の直接の解は「この世に無い価値を生み出す為」です。

では、価値を生み出す事によって何を成したいのか?色々考えて結局最後に行きついた結論は、根源的な欲求の話でした。全ての生物は本能的に進化する欲求を持っているのです。突然何を言いだすのかという流れのぶった切り方ですが、頭の中はそれで整理がつきました。人類は二足歩行を行い、自由になった手で道具を使い、火を使い、言葉を使い、爆発的な進化を遂げてきました。近年に入り、交通インフラ整備による移動時間の圧縮、デバイスによるパラダイムシフトが頻発し、人々の生活様式や水準を激変させてきました。例えば洗濯機一つとってしても、それまでタライで手洗いしていた時間を別の事に費やす事が出来るようになり、その余剰時間が更なる進化をもたらしているのだと考えます。であれば、これまで無い「価値」を生み出す事が出来れば、人類はその価値によって得た余剰時間を利用してまた進化をする事が出来るのではないでしょうか。世の中にイノベーションを起こしてきた偉大な起業家や発明家たちによって、我々平民は更に進化し続け存続する事が出来たのです。

 

折角生んで頂いた人生なのですから、最大限楽しみたい。生きてる間に宇宙にも行きたいし、電脳世界でゲームもしたい。

ならば進化の速度を加速するお手伝いをしようじゃありませんか。人と人が協力しあって成り立つこの社会に、本当の意味での一員として参加しよう。

そんなふうに考えた2014年の年の瀬です。2014年、これまた濃い1年でした。来年どう動くかもまだ全然分かりませんが、引き続きどうぞよろしくお願い致します。