酔いどれデザイン日誌 - Drunken Design Diary -

都内でデザインファームを営む酔っ払いが、UI/UX論やデザイン思考論を書き殴ります。

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ナウいIAになりたいWEBクリエイターに捧ぐ、情報設計入門

知識は使う為にある

もしあなたが現役バリバリのWEB制作に関わるディレクターやデザイナーなら、情報アーキテクチャ(IA)で扱う事柄は当然の事と感じるかもしれません。
しかし、情報アーキテクチャで検索すると概念的な部分や理論的な部分にフォーカスした記事は多くヒットしますが、実践的なノウハウを扱うものがとても少ないように感じます。

もちろん概念や理論を学ぶ事も大切ですが、そんなものは使わなければただの雑学知識です。私はそれを実案件にどう活かしていくかまで踏み込んで考える事が一番大切だと思っています。
その道しるべ兼覚え書きとして、これからIAスキルを磨いていこうというWEBクリエイターの皆様と共有したいと思い立ってブログを立ち上げてみました。

今更そんな思考プロセス学ぶまでもないよと思ってるあなたも、まあちょっと暇つぶし程度に見てってくださいよ。

 

そういえば、情報アーキテクチャという言葉が無かった時代は、これらのフローは何と呼ばれていたのでしょう?
正直、言葉を知らなくても無意識的にやってた事ですし、私自身も意識して「あぁ、これが情報アーキテクチャか。」と思い始めたのは実は今年に入ってからだったりします。

 

目次

 

散らかったデスクトップをどうやって片付けますか?

デスクトップ(PCを立ち上げた最初の画面)、ちゃんと片付いてますか?
インストールしたソフトのショートカットやダウンロードしたファイルが散らばってませんか?
別に散らかってるならIA失格だ帰れとは言いませんが、IAは情報を整理するプロな訳ですからこれは是非整理整頓したいですよね。

 

では、あなたは画面に散らばったアイコンをフォルダにまとめる時、どんな基準で分類(カテゴリ化)しますか?

 

  • 用途別にまとめる
  • 拡張子別にまとめる
  • 提供元の人や場所別でまとめる
  • 受け取り日付別でまとめる
  • とりあえず全部1つのフォルダに放り込んでスッキリ

 

 ざっくり見積もるとこれくらいでしょうか。(多分もうちょっとあります。)
余談ですが、インストールしたときにデスクトップにショートカットを作る機能、そろそろ滅びませんかね・・・。

さて、同じバラバラの情報でもこれだけのパターンで分類できる事になったわけですが、何故分類の仕方に差が生まれるのでしょう?
用途別でまとめた人は、「何度も繰り返して使う事が多そうなので、使いたい!となった時にすぐ見つかるように」こうやって分類したのではないでしょうか。

提供元の人や場所別でまとめた人は、「案件ベースで物事を進めるにあたって、他の案件と混ざって見つけにくくならないように」提供元で分類したのではないでしょうか。

これら無意識的に行っている「見つかりやすくなるようにする」思考プロセスが、情報アーキテクチャの基本です。カッコよく横文字を使うと「ファインダビリティ」と言います。

分類が複数パターン出てくるのは「次にその情報にアクセスする時の自分」のイメージが異なる事によって差が生じるからです。
作業開始前の自分、作業中の自分、同じ自分なはずですが、その時のニーズによって最適な情報のまとめ方は違います。

実際の仕事でよくあるケースを例に挙げると
「新規顧客獲得に向けて導線の設計を見直したいと考えている。お問い合わせフォームからのお問い合わせをゴールと設定してコンバージョン率を上げる為の提案を下さい。」
などでしょうか。

ここでダメなディレクターは「承知しました。では、お問い合わせフォームへの導線を強化するようにナビゲーションやメニューを再設計しましょう。」などと提案するんでしょう。そしてデザイナーには「フォームへの導線ボタンを目立たせて。」くらいに噛み砕かれた情報が伝えられます。
リニューアルが失敗に終わりそうなのは何となく分かりますよね。

 

クライアントの出す要望書を鵜呑みにしてはいけない

先程のケースでは、その情報にアクセスする時のニーズによって最適な情報のまとめ方は違うという事を見落としています。新規顧客はお問い合わせをする為にサイトにアクセスしてきた訳ではありません。自分の利益になりそうな情報があるかどうか探しに来ているのです。
先ほどのケースでIA(情報設計者)が真っ先に行うべき事は、クライアントが「新規顧客」と呼んでいる層が、どんな情報を求めているのかを調査・分析する事です。その土台が無ければ導線の設計なんて出来るはずがないのです。

IA(情報設計者)は、情報を求めて来た人に対していち早く求める情報を提示できるように画面設計をしなければなりません。
客の出す要望書は、そういった所謂ユーザー視点が欠落した状態で求める結果だけが記されている事が殆どです。(ビジネスニーズに偏っている状態。)これを鵜呑みにしてそのまま作ってしまってはクリエイターの名折れです。

 

これは持論ですが、客は外部制作会社に対しては同調よりも異論・反論を求めていると思っています。だって、ハイしか言わない相手と話したってつまらないじゃないですか?そんなものにお金は支払わないと思うんですよね。イエスマンは内部に居ればいいのです。外部に求めるのは、客観的なユーザー視点なのだと思います。

ヒューリスティック分析のススメ

先程クライアントが「新規顧客」と呼んでいる層について調査・分析する。と書きましたが、そんなのマーケターじゃないんだから本分じゃないよ!と思っていませんか。
そんなことありません。むしろ明確にターゲットをイメージ出来ない状態ではディレクションもデザインも出来ませんので、我々のようなクリエイターこそ調査・分析をすべきなのです。

あなたはヒューリスティック分析というのをやった事がありますか?
WEBサイトなどの分析方法の一つですが、やり方は単純明快。共通の項目を設けて、その道の専門家が経験則に従って評価するだけです。

競合他社と比較をする際にもよく使われたりしますが、その道の専門家でも無ければ経験則と呼べるほどのベテランでもないと自覚している皆さんは、自発的にやった事が無いのではないでしょうか。

結論から述べます。ヒューリスティック分析を是非やってみてください。経験則だとか専門家だとか関係ないです。私はWEB業界に入って半年くらいの時にやりました。

ヒューリスティック分析をオススメするポイントは3つです。

  • ユーザー視点とビジネス視点両方から一つのサイトを評価する事が出来る
  • やった数だけ情報設計の経験値が溜まる
  • 客観的な評価を下す事でクライアントが喜ぶ

何度も書きますが、クライアントの要望はビジネスニーズに偏っています。そして、それを客観視してユーザーニーズを探し出せるのは外部の人間しか居ません。
行動経済学でよく出てくる「バイアス(心理的な偏り)」という単語があります。人間の行動はどうやっても思い込みや事前知識などで偏りが生じるというものですが、クライアントが出してくる要望は専門知識が邪魔をしていて、まさにこのバイアスの塊であることがほとんどです。

我々はWEBクリエイターであり、その専門分野がクライアントと被る事はまず無いと思います。つまり、クライアント側にとっては自分たちの専門的な視点からの提案は初めから期待していないのです。
であれば、クライアントが要望書を出すという行為はこう捉えるのが妥当ではないでしょうか。

「価値を提供する側として捉えている問題と目指す成果はこうです。では価値を得る側の目線でこの目標に到達するためにはどうなっていて欲しいですか?」

平たく言うとビジネスニーズは提供した。ユーザーニーズを補強して提案してくれ。といったところでしょうか。
私の経験上、極端に的外れでない限りこういった分析資料を渡したクライアントには例外なく喜んで頂けてます。

 

まとめ

  • 見つけやすさ(ファインダビリティ)の向上がIAに与えられた任務
  • 情報アーキテクチャのキモは誰にとって使いやすくまとめるか
  • 経験は関係ない。どんどん首を突っ込もう

表題に「ナウい」と付けたのには訳があります。なぜならば、本来の情報アーキテクチャとは、情報の組織化と構造化までが担当分野なので、「誰に対して」というのは既に与えられている、もしくはあまり深く考えないのです。

実案件において優秀なマーケターがタッグを組んでくれるとは限りません。なので、現代のIAにとって必要な知識として、調査・分析にもスポットを当てたかったという思いがあります。

今回はIA的な思考とは何か。クライアントが求めているものは何なのか。分析は積極的にやろう。の3本でお届けしました。情報アーキテクチャは突き詰めていくともっと理論的であり、もっと複雑で高度なスキルです。
ですが、このブログにおいては自分が理解をする為にも、出来る限り分かりやすい表現でまとめたいと考えています。

思ってる事を文章にする事で私自身の中にも考え方がしっかり定着するような気がしてますので、よろしければまたお読み頂ければと思います。

では、また。